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『涙の鉄火丼物語』とは…
トレセン内には○○調教師の親戚といった具合に、血縁関係者が多く存在する。特殊な業界であり、幼いころから馬と触れ合っていることを考えれば自然の流れかもしれない。
しかし、中にはそうでない人も当然いる。競馬学校騎手課程第1期卒業生で、現在は調教師の岩戸師も後者に当てはまる。
「一次試験の時にちょっとしたトラブルがあって、30分ほど遅刻してしまって…。でも、JRAの職員さんがとりあえず受けるだけでもと言って受験させてくれたし、太郎君がリンゴを買ってきました…というレベルの試験問題だったので、時間内に解くことができた」
無事に合格はしたものの、騎乗経験者との差には痛感したと語る。ちなみに同期としては柴田善騎手などがいた。
「俺と武藤だけが、それまで馬に触ったことすらなくて、つらい日々が続いたね。そこで2人でいろいろと考えて、退学届けを出そうかという話になったんだ。その出そうと思った日の献立を見たら、好物の鉄火丼の名前が…。それを食べてからでも辞めるのは遅くない…という話になったんだけど、その後に楽しいレクリエーションなどがあって、その話自体がなくなってしまったんだ」
もし献立表に“鉄火丼”が存在がなければ、岩戸師、武藤師は誕生していなかったかもしれない。岩戸師はこの一連の話を『涙の鉄火丼物語』と語っていた。
(美浦想定班・文元 仁)
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