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怪物との思い出

 個人的に数少ない“プチ自慢”。それは、オグリキャップのリンゴを食べた経験があるということだ。

 まだ、関西馬が関東圏のレースを使う際に美浦へ入厩していた当時のこと。初めてトレセン取材に出向いた私が先輩記者から与えられた仕事は、90年の安田記念に出走するため東上していたオグリの馬房を訪ねて、関係者と雑談をすることだった。その場で、笑顔がすてきな担当の池江厩務員から「食べてみる?」ともらったのが、真っ赤な1個のリンゴだった。

 具体的に何を取材したのかは覚えていない。それでも、池江厩務員の優しさに触れて感激したこと。また、出走したどのレースにも感動や驚きがあった芦毛の怪物が普段食べているものと一緒だという、興奮もあっただろうか。甘くておいしいあのリンゴの味は大切な記憶であり、私の競馬担当記者としての原点だ。

 ラストランとなった同年の有馬記念、最後の直線で不屈の名馬は中山の急坂を先頭で駆け上がってきた。武豊を背にそのまま押し切ると、17万人以上のファンの熱狂と興奮に包まれた競馬場のスタンドは船のように揺れた。競馬という枠を超え時代のヒーローとして駆け抜けたという点で、オグリはほかの名馬とは決定的に違う存在だった。

 記者として接することができたのは現役ラストイヤーだけだったが、その短い期間でもいろいろな記憶がよみがえる。もちろん、あのリンゴの味も再び鮮明に―。心から冥福を祈りたい。

(関東デイリー・野田口 晃)

2010年07月13日