東日本大震災から１年、改めて思うこと

　東日本大震災から１年。リレーコラムで、石巻出身の自分に順番が回って来るのもひとつの巡り合わせか。まずは犠牲になった方々、被災された方々すべてにお悔やみと、お見舞いを申し上げます。

　筆者は３月13日に石巻に入って１週間ほど滞在し、混とんと混乱を目の当たりにしてきた。ライフラインが寸断され、携帯電話も接続不能。食料もろくに手に入らず、得られる情報は自分の目・耳で知ったもののみ。さらに道路には電信柱、車、船、屋根などが散乱し、移動手段は限られる。50cmの浸水、20cmの障害物があるだけで身動きが全く取れなくなる。そんな人間の無力さに怒りすら覚えた。

　ただ、普段は頭で考えることすらない「生きる」という行為に、真摯（しんし）に向き合えたのは初めて。今まで好きなことばかりしてきた自分が、どれだけ幸せな時間を過ごしてきたのか。それを感じられたことは、今後の財産にしなければいけない。

　しかし１年も経つと当時の感情も風化するもので、自分自身も含めて嫌になる。やれ絆、絆と騒いでいたものの、結局は身の保身のために責任をなすりつけ合い、他人の脚を引っ張り、平気で人を陥れる流言をまく。足並みをそろえろとは言わないが、せめて同じ方向に切磋琢磨（せっさたくま）しながら進めないのだろうか。競馬はもちろん、日本という国が危機にさらされている現在。それをできるのは今しかないと思う。

（栗東想定班・木村拓人）

2012年03月10日