ライブに最適の函館競馬場

　30数年前にはロックバンドのコンサートに足しげく通い、マーシャルサウンドに魂も体も震わせた安川少年。スーパーギタリスト、リッチー・ブラックモアを師と仰ぎ、黒装束に身を固めつつも、決して奇行には走らなかった。言葉は通じなくとも、振り絞る声、表情、はじき出す音は問答無用に共感を呼び起こしたものだ。

　函館出張に旅立つ直前の今月２日、新宿のパフォーミングギャラリーで、知人が参加する「Ｗａ」なる創作ダンスを観劇してきた。全く初めての経験であったが、小さなホールを大きく使い、躍動感に満ちたダンスを披露する５人の女性は、とても輝いて見えた。食わず嫌いはよろしくない。『ライブ』というものは、ジャンルを問わず感動を与えてくれる。

　人と馬との距離が最も近い競馬場。我々から“北海道の顔”と呼ばれる清水英厩舎の菊地助手は「物価の安さや温泉がある点はもちろんだが、近くで馬が走るからいいよね」と函館の魅力を話す。馬の息遣いや筋肉の動きまで手に取るように分かり、蹄が馬場を叩くと軽い地響きが起こる。小さな競馬場でこそ、大きなパフォーマンスを見ることができるのだ。ＡＫＢ―を引き合いに出すまでもなく、コミュニケーションを欲している今だからこそ、函館競馬場は価値があると思う。

（美浦想定班・安川時男）

2012年06月08日