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近い将来、装蹄の世界が変わるかも…

 先日、装蹄についての講習会に参加し、釘づけ装蹄、接着装蹄の手順を一から見学してきた。参加前は「どの馬も接着装蹄にすればいいのに」などと考えていたが、典型的な素人考えとはこのこと。接着式は全てを解決する便利な代物ではないようなのだ。

 接着装蹄は蹄が薄い、もろい馬のために、やむなく用いられるようになった。ディープインパクトやウオッカなどがこの方法で蹄鉄を固定している。

 ただ、蹄は着地の際の加重によって変形するものであり、この変形というのが馬にとって極めて重要な動きなのだ。衝撃の緩和はもちろんのこと、脚先の血液循環の手助けまでしている。従来から行われている釘づけ装蹄は蹄踵部の動きを妨げないやり方だが、接着装蹄はがっちりと全体をホールドしてしまうため、“遊び”の部分がない。すなわち変形によるメリットが受けられなくなってしまう。

 画期的と言われた接着式が、釘づけ式を追いやるどころか、支流に甘んじているのは前記の理由によるもの。ただし、その関係が逆転する可能性もある。蹄の変形を抑制せず、その場で加工可能で、かつ安価な素材が開発されれば、装蹄の世界は一気に様変わりするだろう。企業や大学が本格的に乗り出せば、近い未来にも実現できそうな気がする。

(関西デイリー・長崎弘典)

2012年06月12日